めんどいことを考えないのが幸せな社会は必ず滅ぶ
本読んだ。水問題について勉強したいと思ったので。
- 作者: 橋本淳司
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/06/30
- メディア: 単行本
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短期視点、長期視点、地域視点、日本視点、世界視点、経済視点、行政視点、
様々な視点からそれを採り上げ、その課題を指摘していく内容。
筆者は所々で、水問題は決して日本と無縁な物ではないこと、
むしろ日本は商品の流れを通じて積極的に水問題の一端を担っている国であることに触れ、
そのことに日本人が無頓着であることに対して、問題意識を持つように呼びかけている。
文章はとにかく具体例が多く、読みやすかった。
筆者はかなりプレゼン能力高いと思う。
所々で内容を離れて文章の構成の方に感心してしまうほど。
最近思うのが、人から人へ物事を伝える場面において、
・伝える側が伝えやすくするために払う努力量=x
・伝えられる側が理解するために払う努力量=y
・情報量=i
・情報の伝達に要する時間=t
とするとき、
・x+y=i/t
が成立する、すなわち、
一定の時間で一定の量の情報を伝える場面において、
伝える側の努力と伝えられる側の努力は常に相反する関係にあるのではないかということだ。
この本の読みやすさは、xが大きいおかげで、iの大きさに対してyとtが少なくて済むところにあるのだと思う。
さて、本の話に戻る。
一言でこの本の感想を言えば、「暗い気持ちになった」だ。
水問題は、環境問題や外交問題、経済利益や地方行政と複雑に関連していて、
簡単に解決方法が見つかるものではない。
温暖化で水は偏在し、食料不足がさらに深刻化、
人口減少で地方の水道行政は破綻し、水はビジネスの道具になって金のあるところに集まる。
そしてここで重要なのは、水は「無ければ死ぬ」ものであるということだ。
このことが、単なる環境問題、外交問題にはない緊急性をもたらし、
経済利益優先の活動に対する制限を必要とさせ、
世界の隅々にまで行き渡る平等性を不可欠にする。
しかし、現在のところ、根本的な解決方法はないまま、問題は深刻化する一方だ。
もちろん、暗いことばかり書いてあるわけではない。
技術革新や国際協力によって地方や途上国で安く安全な水が手に入るようになった話や、
巨大な国際的水道会社の出現によって、水道普及のノウハウが世界中に行き渡るようになった話など、
明るい方向への話題も、具体例つきでしっかり紹介してある。
しかし残念ながら、この本を読む限りでは、
水問題全体を見たとき、将来は暗いものでしかないという印象を持った。
先に書いたように、水問題は命に関わる、緊急性を要する課題だ。
同時に、環境問題をはじめ、複数の問題が絡み合った困難な課題でもある。
このような問題に対し、どう対処していけばいいのだろうか?
僕は、「みんなでひたすら考えること」が唯一の解決方法ではないかと思う。
大多数が真面目に考えれば、それが行政や経済の活動基準になるからだ。
反対に最もしてはならないのが、「臭いものに蓋」をする態度であると思う。
だけど、今の社会では、残念ながら後者の態度の人間が多数だろうと思う。
僕は常々、「めんどくさいことを考えないのが幸せな社会」に怒りを感じている。
めんどくさいことを考えないことによって将来何が起こるか、
僕が想像しているシナリオを簡単に説明すると、
めんどいことを考えないのが幸せな社会
↓
めんどい問題発生。だが、まだその影響は小さい
↓
大多数の人間は、「臭いものに蓋」
↓
民主主義なので、大多数の意見が採用される
↓
みんなそのめんどくさい問題を忘れて暮らす
↓
次第に問題がでかくなってきて、その影響が生活に及び始める。
↓
不満がでて、やっとその問題に関心があつまる。
↓
しかし気付けばもう取り返しのつかない深刻な状況
↓
不満は膨らみ続ける
↓
やはり大多数の意見が採用される
↓
暴動、戦争
ここでいう「問題」ってのは、水問題でも、環境問題でも、
雇用の問題でも格差の問題でも過疎化の問題でも、
いわゆる社会問題には何でもあてはまるし、
それ以外の身近な問題でも当てはまるんじゃないだろうか。
最初に問題が発覚した時点で、真剣にそれを考えておけば、
問題が深刻化する前に手が打てたかもしれないし、少なくとも深刻化を遅らせることはできただろう。
だから、「めんどくさいことを考えないのが幸せ」な社会は、徹底的に潰さなければならない。
そのためには、「危機感」が必要であると思う。だけど、僕には社会を変える力は無い。
だから、そんな社会への怒りをモチベーションに、
徹底的に「めんどくさいことも嫌がらずに考える」という態度を貫いてやろうと思う。
ふう。書きすぎた。