面白かった。

本読んだ。

いいたかないけど数学者なのだ (生活人新書)

いいたかないけど数学者なのだ (生活人新書)

タイトルの通り筆者は数学者で、
・自分が数学を志すまで
・学生時代の同級生であり、夭逝した天才数学者「S君」の学生時代の「読書ノート」
・筆者が大学で文系向きにやっている講義の紹介
の3部構成。


 どれも面白いんだけど、特に「S君の読書ノート」は印象深かった。
読書記録と一緒に、日々の思いが日記風に書かれているんだけど、
数学の勉強をしなきゃならないのに、
数学と関係ない文学書(=「悪書」)を読んでしまう自分への自己嫌悪や、
大学の進路振り分けで、物理と数学どちらに進学するかを散々悩み、
事務室に行って変更を繰り返すうちに、ついに受け付けてもらえなくなった話
(それゆえ、筆者は、この天才数学者を生み出したのは、
変更を断った大学の事務員なのかもしれない、と言っている)
などが書かれていて、
天才数学者でも学生時代に色々悩んだんだなぁという感想。


 最後に筆者は、
「数学者は変人に見られるが、真理を愛し、人にやさしい心が度を過ぎているから
そうみられやすいだけだ。もちろん私は変人でない」
という文章で本書を締めくくっていて、
なんというか、数学者への親近感が沸いた。


 そもそも、変人と呼ばれる人間は、
「変人」という言葉の意味が分からない人間である気がする。
そして知性というのは、ただ賢いだけではだめで、
賢い人間が垣間見せる人間味、人間味ある人間が垣間見せる賢さ、
そういうものが見えたときに感じられるモノなのかもしれん。