hell

 風邪で死んでた。
消化管は運休、脳は痛みを感じるのに必死、
筋肉は熱を作りだすのに疲労しきって、
42時間ほど、ベッドの上で生物と物質の間をさまよってた。


 この期に及んでも、真っ先に自分の先入観を疑う精神だけは健全で、
限りある脳の活動可能な領域で、
「風邪だという思い込みで布団にくるまってるだけじゃないのか」
「頭が痛いと思い込んでるから痛いんじゃないのか」
「気持ち悪いと思い込むから気持ち悪くなって吐くんじゃないのか」
みたいなことばっかり考えてた。


 けど、頑張って起き上がっても、
やっぱり気持ち悪いものは気持ち悪いし、
痛いものは痛いし、寒いものは寒い。
もちろん、思い込みが無いほうが症状は軽いだろうけど、
思い込みを可能な限り取り除いても、そういう感覚が生じるように体ができているらしい。
脳みそだって、所詮「物質」にすぎないのだな、と感じた。


 ともかく、明日からまた忙しくなる。
それまでに治ったみたいで良かった。