嫉妬は遺伝子のせい

 嫉妬って不思議な感情だと思う。往々にして、自分に実害を及ぼさない対象に対しても発生する感情であるからだ。
 例えば、選挙で負けた相手に嫉妬するとか、恋人が仲良く話している相手に嫉妬するとかってのは、自分に実害が及んでいるケース(役職を取られた、恋人を取られた)の嫉妬なので、理解できる。それに対して、宝くじに当たった隣人に嫉妬したり、若くして起業に成功した人間に嫉妬したり、街で美人と仲良く歩いている男に嫉妬したり、スポーツや芸術の才能に溢れた人間に嫉妬したり、というのは、自分に実害の及ばない範囲で上手くいっている人間に対する感情であるという点でとても興味深い。
 要は「自分が味わった苦労を味わわずに済む奴がいるのが忌々しい」ということなんだろうと思うけど、現実上の不利益は全く無いのにも関わらずこみ上げてくるこの非合理な感情、本当に気持ちが悪い。自分に実害を及ぼさない他人に対して負の感情を抱くというのは論理的に説明がつかない。僕は解説を付けることのできないものの存在がどうしても許せない。
 だから、遺伝子のせいにしている。おそらく人間は、自分と他人を比較して「自分が劣っている」という現実を認めることにストレスを感じるように遺伝的にプログラムされているのだろうという説。そういった遺伝子を持たない、「人は人、自分は自分」を地で行った人たちは、向上心に溢れた我々のご先祖様達に淘汰されてしまったに違いない。