雨+スーツは最悪だ

 外資コンサルティング会社の説明会に参加してみた。シンクタンクコンサルタントの仕事を比べたとき、世界の流れを研究するシンクタンクは、視野は広いが現場との距離が遠い。一方で、依頼者がいて、一緒に問題を解決していくコンサルタントは「要求がより直接的で、それに答えられれば感謝される」という点で面白そうだ。そういうわけで、全く縁の無い業界だと思っていたけど、ちょっと見てみようかなということで。
 参加してみた感想は、「予想通りすぎる」ということだった。仕事の内容も、激務具合とか給料の高さも、全て僕が事前に持っていたイメージと変わらなかった。強いて言えば、同業他社と何が違うか、ということがつかめたくらい。そういうわけで、質疑応答の時間、あんまり仕事のことで聞きたいことが無かったので、「こういう頭の回転の速い人たちは普段何を考えているのだろうか」というのを知るために、ちょっと哲学的なことを聞いてみた。

Q.
コンサルタントというのは、仕事の性格上、常に堂々としていなければ務まらないと思いますが、自信を管理するために何か意識していることはありますか?
A.
物事を知れば知るほど自分の無知が明らかになって、自信がなくなってくる。だから、経験のある人間ほど内心は謙虚であることが多い。だけど、山を登れば登るほど今まで見えなかった場所が見えるのは当たり前だし、全ての場所を知っている必要もない。大切なのは、「自分が関わったこれだけは絶対に自信がある」と思えるかどうかだ。その範囲は狭いかもしれない。でも、仕事はチームで行うから、チームのメンバーそれぞれが「絶対に負けない」を持っていれば、うまく補い合って、チーム全体としては自信を持って解決策を提示できる。
感想:
ポイントは、1)やっぱり偉い人も自信がないのだということ、2)自信を持つのは自分の自信のある範囲だけで構わないということ、3)その分仲間を信頼して補いあうということ、の3点であると思う。「根拠の無い自信」を獲得する練習をしている今の僕にとって、非常に有益なアドバイスだった。

Q.
学生と社会人の最大の違いとして、責任の重さ、というのがあると思いますが、特にコンサルタントの方は、高い料金をもらって期限までに難解な課題を解決しなければならないため、日々強い重圧に晒されながら仕事をされていると思います。プレッシャーをやりくりするために何か意識していることはありますか?
A.
確かに、締め切り前のプレッシャーはものすごいし、これがこの仕事をやっていて一番苦しいことだ。だが、「なぜプレッシャーを感じてしまうのか」ということを考えると、「できそうにないと思ってしまっているから」だということに気づく。前後が分からないときこそ、落ち着いて「今何が目的で、そのためには何をすべきか」というのを考える。考え続ければ絶対に「こうすればよい」というのが見えてくる。経験上、考え続けて上手くいかなかったことは一度も無い。そもそもコンサルタントの仕事というのは、「できないと思わない」ことが仕事なのだから、この重圧に負けてしまう人間はこの職業には向いていないと思う。
感想:
何か「あっと思わせるような」考え方が聞けると思ったんだけど、平凡に「立ち止まって考えろ」という答え。まぁ、プロの人もこうやって地道に問題と戦っているのだということが分かって良かった。

 全体の感想だけど、求める人物像として、受動的な奴は要らない、自分で考えない奴は要らない、入社後は即戦力、ということを強調していたのが印象的だった。ある社員の人は「言われたことをやるだけの仕事がどれだけ楽なことか、と考えてしまうこともある。だけどやっぱり、俺はこの仕事じゃないと続かないと思う」と言っていた。こういう会社の人って、もっと冷徹で人間味のない(しかもげっそり疲れている)人ばかりだと思っていたけど、意外にフランクな人が多かった。このことが一番事前の予想と違ったことだったかもしれない。話が聞けてよかった。面白そうだ。