東アジアってとても面白い地域だと思う

東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本 (岩波新書)

東アジア共同体―経済統合のゆくえと日本 (岩波新書)

本読んだ。
筆者は外交官で、東アジアの国々が食糧危機・エネルギー危機・経済危機を乗り越えていくためには、共同体を結成し、経済や政策の面で協力して動いていく必要があるということを主張している。今の日本は、アメリカへの配慮や中国への警戒心が強すぎるせいで動けなくなってしまっており、経済的な結束で日本のリーダーシップを期待している東南アジアの国々をがっかりさせている。特に問題視されているのが、中国-東南アジア間と、日本-東南アジア間の繋がりは良好なのにもかかわらず、中国-日本間の関係があまり良好ではないところだ。日中の二国は紛う事無い東アジアのリーダー国であり、この二国が協調すること無しには、いくら他の国が積極的に動いたところで、東アジア共同体は実現しない。筆者は本書の最後でこう述べている。

日米同盟・日米安保体制は、日本の生存のため、日本の国益のために、子々孫々にいたるまで維持されるべきだという信仰にも似た考え方は、外務省のみならず、保守派の政治家、経済人、学者、ジャーナリストの間にも多いし、日本人一般に言えることであろう。しかし二一世紀の日本を取り巻く国際環境は大きく変化しており、日本が日米安保体制に無批判にしがみついていることが、真の国益に繋がるのかは疑問である。日米関係のみならず、日中、日韓、さらにASEANをも含めた変化を見据えたグランド・ストラテジーが必要とされている。  (p221)

本書を読んで、外交の難しさというものを改めて感じた。特に日本の場合、近隣国との歴史的背景がスムーズな交渉を難しくしているし、保守的な日本的考え方は、物凄い勢いで変化していく東アジアの情勢についていけていないという印象を持った。本書に載っていた、国際会議で、日本が農産物の自由化の決断を最後まで先送りにしたせいで、結局最後まで残った日本の判断に多くの責任がのしかかる事となり、不利な条件をのまざるを得なくなったという話は、明確なビジョンを持てずにいる日本らしい話だと思った。