ES読んでみた


これが8mmレンズの威力@尾瀬ヶ原


 最近エントリーシート的なものを読む仕事をしている。自己PRなど、就活生の頃、何時間もかけて書いていた文章だけど、それがリスト化されたものを眺めるのはなかなか楽しい。そして、選ぶのって本当に難しいなぁと感じる。以下、感想をまとめてみる。(あくまで個人の感想で、会社の採用とかにはまったく関係ない話ですよ、念のため)

 まず、ざっとリストをみてすぐに目が行くのは、短い文章だ。ESのほとんどの項目で200字とか500字とかの文字数制限が設けられている中で、ぎっちり埋まってない文章はリストの中で歯抜け的に目立つ。で、大体そういう文章って読んでみてもしっかりと推敲されていないという感想。本気で書いているんなら、言いたいことがたくさんある中で、一番伝えたいことだけを濃縮してなんとか文字数制限の中に収めるってのが普通じゃないかと。この意見に対しては「長けりゃいいってもんじゃねーだろ」という反論もありそうだけど、それは「発言が自由な場で無駄に長い話をするな」ということであって、たったの数百字でしか自分を表現する自由が与えられていない場では、やっぱ限界まで頭をひねって最高濃度の文章を送りつけてくるべきだよなって思った。

 んで次、中身を読んでみて、特に自己PRのあたりを見ていて思うのが、履歴書みたいな内容のが多くて残念だなって感想。多いのが、「私の強みは○○です。その根拠として、学生時代○○に所属し、○○を行い、○○を成し遂げました」って構成。要は、事実の整理にとどまっていて、自分の頭から出た言葉による補強がないということだ。事実は事実として、自慢できる過去はアピールに入れてもらえると面白いと思うのだけど、さらにそこに「その過去の行動にはどういう考えがベースにあるのか」「その成果によってどんなことを考えたか」といった、自分なりの解説がつけられていると、読み手に「本当にそう思っているのだなぁ」と思わせて説得力を高められるし、さらに、考察が面白かったり、苦悩に満ちたものであったりすると「一度会ってみたいぞ」と思わせることができると思う(無論、文章が論理的で筋が通っている必要はあるけど)。もちろん、経歴だけで「会ってみたい」と思わせるようなすごい人もまれにいるけど(起業に成功して儲かってます、みたいな)、「留学してました」「バイト先で活躍しました」「団体を運営してます」「学内で表彰されました」くらいだとその人にとってはとっておきの成功体験なのかもしれないけど、正直みんなそれくらいの体験の1つは持っているので、「それはあなたの中でどれくらい凄いことなのか説明して欲しい」って思ってしまう。差別化するためには自分の言葉を使うことが必要だ。

 もうひとつ、中身を読んでみて思うのは、自分の強みだけでなく弱みにも触れられている自己PRは好感度高いよなあってこと。もちろん、PR欄に弱みだけを書く人はいないだろうから、必然的に「弱みの克服策」も語られることになるのだけど、ここまで触れられていると、読み手に「自己分析力きちんとしてるな」と思わせることができると思う。自己分析がきちんとできている人ってのは、「メタ視点で物事を捉えられる」という点においても優秀だと思うし、なによりも「伸びしろがありそうだ」という印象を持たせることができるのではないか。自分の弱みを直視する「素直さ」、対応策を考える「向上心」、そしてそれをESに書く「自信」を兼ね備えた人物は、経歴や成績に関係なく、自己成長できるポテンシャルを持った人材として見ることができると思うからだ。弱みを克服しようとする苦悩が書いてあったりすると、ますます会ってみたくなる。ポテンシャルを見せるためには、弱みに触れてみることも必要だ。

以上、まとめると、

  • 文字数制限のなかでめいっぱい考えて書いた感じが伝わってくる
  • 事実だけでなく、事実に対してどう考えたかが伝わってくる
  • 自分の弱みとその克服策についてどう考えたかが伝わってくる

以上3点を満たすESが高感度高いのでは、という感想。要は「しっかり自分で考えて書こうぜ」っていう単純かつ難しい結論なんだけど。ただ、繰り返しになるけど、あくまでこれは僕の意見なので、まったく別の考えで見ている人もたくさんいると思う。選ぶ立場になってみての一番の感想は、ESこんなに人によって評価が分かれるものなのか、ということかもしれない。

 さて、かく偉そうに語っている僕ですが、過去に書いたESを見返してみると、上記のポイントはあまり守られていなくて、むしろ「プレゼン能力の向上に力を入れていてその証拠に校内プレゼン大会で優勝しました!」みたいな、全然魅力のない文章を書いていたりしていたことが判明しました(そのESを提出した先には書類選考で落とされてました。納得)。一方で、別のESではプレゼン能力向上に関する発見とか苦悩を展開していたりして、それは今読み返しても(自分で言うけど)見事な出来。そういうのはやっぱり書類選考通過している。が、学生時代の自分にはそこの違いがあまり見えていなくて、文字数制限が少なければ単なる成功体験を語っておいて、文字数が多ければ苦悩を展開する文章にしよう、ってくらいの違いでしかなかった。(※就活生時代に書いた自己分析論を今読み返すと、的を得ていたり外していたりして面白い。)なので、読む側の立場になってみて感じる問題意識として、事実羅列系のESの中にも、書いてないだけで深い考えを持っている人もいるのかもしれないなーってのが常に頭の中にあった。やっぱ書類選考ってラフだなって思った。できればいっぱい面接に呼びたいけど、なかなかリソース的にそうは行かないので、致し方ないのだけど・・・