ネガティブとポジティブのシナジー


2羽のコンコルド

 人間の性格をベクトルで表したとき、ベクトルの向きを変えるのがネガティブな感情であり、ベクトルの長さを伸ばすのがポジティブな感情だと思う。だから、人が一番変わるのは、現状を否定されて足止めされて打ちひしがれているところに、かすかな光が見えてきた時なのだと思う。良い教育者とは、そうやって自然に他人を導くことができる人だと僕は思う。大人だろうと、子供だろうと、他人を動かしたい・変えたいのであれば、頭ごなしに説得したり叱りつけたりするんじゃなくて、外堀を埋めて自己嫌悪に落とし込んだあと、ちょっと褒めて前向きにさせてあげればいいのだと思っている。
 さて、お金が無い現状を嘆くフェーズも一巡して、現実を受け入れはじめていたところで、思うように進んでいなかった論文の筆が進みだして、まさに今、ネガティブとポジティブが組み合わさって新しいフェーズに進みだした気がしてきたところだ。こういう気持ちを新たにした。

莫大な金銭的機会損失と引き換えに、これだけの自由を手に入れた。だとすれば、これだけの自由がなければ絶対に到達できないレベルの仕事をしなければならない

 老後に趣味ででもできそうなレベルの研究や、ちょっと金と時間を積めば誰でもできるレベルの研究ではダメだ。人生を捧げるのに、その程度の研究で終わるわけにはいかない。付け焼刃ではない、命懸けレベルでやらなければ到達しえない領域というのは、どのような仕事にも、必ず存在すると思う。給料を人と比べて将来を心配するヒマなんかあるんだったら、自分のやっていることが、将来本当にそういうレベルの仕事に発展しうるのか、平凡な研究に終わってしまわないか、ということのほうが、よっぽど心配事であるべきだ。
 ギアが変わった。小さい頃から、僕が成長するのは、いつも激しい自己嫌悪に襲われた後だ。これは定期的なイベントだったのだ。