9月なのに息白いんですけど

 今日のバイトでの出来事。
今日は韓国からのツアーのお客さんの夕食を担当。
食事も終盤にさしかかり、席を立つお客さんも出始めた頃、
一人のおばさんが紙に何か包んで会場から出てきた。
なんだろうな、と思っていると、
そのお客さんは口元とその包みとを指差して、何か伝えようとしてきた。
言葉の壁に阻まれて何をいっているのか分からなかったが、
すこし恥ずかしそうな、「やっちゃいました」的な表情を読み取った僕は、
夕食を食べ過ぎて吐いてしまって、その包みを置いておく訳にもいかず、
ホテルの部屋までもって帰って捨てようと持ち出したが、
できたらここで処理していただけませんか?
という意味だと解釈した。
僕はオーケーオーケーと言いながら、相手からその紙包みを受け取った。
渡すのに少し躊躇しているようだった。
そしてやはりその紙は暖かく、少し湿っていた。
僕が包みを受け取ると、躊躇の表情が、驚きのような、申し訳なさのような表情になった。
きっとそんな汚いものを素手で持って大丈夫??という意味なんだろう、
「いやいや、やっぱ自分で捨てるわ、すみません」と手を差し出されたが、
僕は笑顔でオーケイと言いながら裏に持っていってゴミ箱に捨てた。
もう大丈夫です的な表情で戻ってくると、まだそのおばさんはこちらを見ている。
やはりすこし驚いたような表情をしている。
しばらくの沈黙に言葉の壁を感じたあと、
おばさんはなんとも言えない笑顔で、「サヨナラ」と手を振った。
僕はそのおばさんがまだ申し訳なく思っているのと思い込んで、
再び大丈夫ですよ的な表情を見せて、「サヨナラ」と手を振り返した。
おばさんは帰っていった。
そこへ、バイトの女の子がビニール袋を持って走ってきた。
バスとかによく備え付けてある、まさにG袋って感じのやつ。
僕は「もう遅いよ。処理しといたから大丈夫」みたいなことを言って、
一緒に片付けを始めた・・・
だが、さっきのおばさんの態度がどうも引っかかってたんで、
片付けが半分くらい終わった頃、その子に、「さっきの袋ってなんだったん??」って聞いた。
「お客さんが料理を持って帰りたいから袋が欲しいって・・・」
その瞬間全てがつながった。あの行動も、表情も。
僕は完全に勘違いしたまま、身振りの会話が成立したと思い込んでいたのだ。
本当に申し訳ないことをしてしまった。
OKとか言いながら飯を没収し、笑顔で戻ってくる僕をみて、あの表情は納得だ。
言葉の通じない世界の出来事として相手の記憶にも永久に残るに違いない。
本当にごめんなさい。
しかしまぁ、原則持ち帰り禁止で、僕が最初に対応してたら「ダメ」って言ってただろう。
それが救いだ。
それにしても、相手の前でゴミ箱にぶち込まなくて良かった、と心の底から思った。