僕には何も無い

 就活で会う人達がいちいち凄くて自信を失う。研究でテレビ出ましたとか、役者目指してましたとか、起業しましたとか、一人で海外回りまくってきましたとか、5ヶ国語喋れますとか、そういうレベルの人がごろごろしてる。すごい、と思うと同時に、これまで何もしてこなかった自分の糞さに気づかされるようになった。
 僕のこれまでの人生はネガティブチェックの連続でしかない。世間が言う「あるべき姿」を追従する能力がそこそこ高かったおかげで、中学や高校ではうらやましがられたし、大学も名の通ったところに入れたけど、それは「踏み外さなかった」だけにすぎない。もう、これまで僕を勘違いさせ続けてくれた「あるべき姿」はどこにもない。ここにきてようやく、これまで自分が何もアクションを起こさなかったことが、致命的なことであるということに気がついた。
 僕は楽器が弾けるわけでもないし、将棋が強いわけでもないし、話が上手いわけでもないし、スポーツができるわけでもない。僕は踏み外さなかっただけで、何も持っていない。何も達成していない。そもそも、何もしていないのだから。それは、どの会社を受けても、書類と試験以外の選考プロセスを通過できない状況が語っている。考えの深さも、自分の中に通った軸も、対人接触能力も、学校では教えてくれない。それをライバルは様々な経験を通して身につけている。同じ歳生きているはず(むしろ学部生なら年下)なのに、これまで一体僕は何をしていたんだろう。
 僕が他人に誇れるものって何?ここまで踏みはずさずに勘違いし続けてこられたこと?悲しすぎる。自分には何も無い。