自信のフィードバック調節機構

 先日、あることで友達に褒められたんだけど、
何も考えず、「いや、全然そんなことないよ(笑」
的な返事をしたら、
「どうしてすぐ謙遜するんだ」と不機嫌な顔をされた。


 分かっとる。分かっとる。
相手の好意を退けて、状況によっちゃ相手を馬鹿にする態度であることは分かっとる。
褒められて嬉しい自分がいるのも分かっとる。
素直に「ありがとう」と言えば相手も自分も満足することも分かっとる。
けど、意識しないとそれを言えないんだ。
どうしても「そんなことない」と考えたくなり、言いたくなってしまう。


 一体何が自分を操作しているんだろう。
この問答の相手は親しい友人だったから、ただのツンデレじゃないの?という説は否定しておこう。
そうして考えてみると、二つの無意識が素直な自分を操作していることが見えてきた。


 一つに、すぐ自信過剰になって、暴走する自分を知っていることがある。
自信は生きるのに必須な栄養だけど、僕はその調節がヘタだ。
ちょっと自信がつくと、自信が自信を呼ぶ正のフィードバックが生まれて、
たちまち活発になり、調子に乗りだし、偉そうになる。


 そしてそういう状況は、偉そうな自分に気付いて自己嫌悪に陥るか、
プライドをなし崩しにする出来事に遭遇して鬱るかするまで続く。
そうして一度自信の崩壊が始まると、そこにもまた、
正のフィードバックがかかってしまい、どこまでも落ち込んでいく。


 自信を上げる方向にも下げる方向にも、強い正のフィードバックがかかっているから、
双方向の反応をコントロールできる範囲はとてもせまい。
だから、適正な範囲内に自信を落ち着けるため、
自信の上下動に常に慎重になり、
負のフィードバックを働かせている自分がいる。


 そういうわけで、外から褒められて、自信がつきそうになると、
とっさにそれを否定する方向に考えてしまうらしい。
この性質は、今まで何度も変えようとしたけど、
変える行為自体に自信の上下動が伴うため、今のところうまくいってない。
利点欠点を把握しながら付き合っていくしかないようだ。


 二つ目は、僕が、「満足するのが怖い病」にかかっていることだ。
僕はここ一年で色々と考え方が変わったけど、
どんなに頑張っても、恐ろしく高い向上心は変わることなく、
その感情の根拠にたどりつくこともできない。
一体何を目指しているのか、最近自分でも分からないけど、
とにかく、現状を受け入れることを拒んで、
「上」と勝手に決め付けた方向に向かって向上しようとする性質が僕を操作している。


 これは本当にコントロールのしようがない。
現状に満足しちゃったほうが幸せなのではないかと思って苦しんだこともあったけど、
現状に満足できない自分に満足するという方向で、最近の精神は落ち着いている。
そんなこともあって、褒められて満足する自分の姿に拒否反応を示してしまうらしい。


 しかし、それを外に向かってだしてしまうのは、やっぱ問題があるよな。
僕の考える、人付き合い上の様々な問題は、ここだ。
空気を読む努力をするよりは、変に思われても素直に振舞うほうが楽だけど、
何も考えず出しすぎると相手は僕から離れていく。


 社会が少人数で、互いがどんな人間か分かっている状況なら、問題ないだろう。
でも現実には無限の人間がいて、一人一人を深く知ることができないから、
しかたなく、「多くの人間に使える接し方」をしなければならない。
つまり、「満足してない」という感情を抑えて、
その下の「嬉しい」という感情を表に持ってこれるようにしなきゃならない。
うーん、めんどくさいなぁ。