話すことと書くことの違い

 プレゼン能力(伝える能力)の大切さに気がついて一年くらい経ったけど、今もその必要性を強く感じる一方だ。ネット(というかgoogle)の発達で、選ぶのが苦痛になるくらい情報が氾濫する今の時代、伝える側に伝える気が無い情報はどんどん淘汰されるだろう。プレゼン教バンザイ。


 さて、プレゼン能力には、話す力と書く力がある。どちらも自分の考えを相手に伝える力だ。だから僕は、「書くのが上手くなれば話すのも上手くなるだろう」というふうに思っていた。でも、それは完全に間違いだと最近気付いた。僕が思うに、話す力の方が遥かに要求レベルが高い。この違い、一言で言えば、「書くのは考えること」「話すのは考えたこと」という違いになるのだと思う。

 書く、という行為は、基本的に一人でする。だから、好きな時に書き始め、好きなだけ考えて、好きなだけ書きなおせる。つまり、漠然と書きたいことをイメージしている段階で文章を書き始めたとしても、書きながら思いついた事を付け加えていけばそれなりの文章になるし、一通り書いたら読み返して、繋がりの悪いところを書き直すことも自由にできる。この日記もまさにそうで、書き始めのときは何となく感じていたことが、「書きながら考えていく」うちに、具体的なアイデアになって出てくる感じだ。読み返しを繰り返して日付が変わって自分に呆れることもしょっちゅう。

 一方、話す場においては、そうはいかない。それは、話す場には、相手がいるからだ。相手がいれば、時間の使い方はとてもシビアになる。なぜなら、話し始めた瞬間から、話全体のアウトラインを常に頭の中に置いて、言うべきことを言うべき順番で言わなければならないからだ。さらに、「上級プレゼンター」さん達の場合、身振りを加えたり、話を聞く相手の反応を見ながらトークの調子を変えたりもする。まさに脳みそフル回転。こんな状況では、「話しながら考えていく」なんてマネはとてもできない。話す前から、全てが順番どおりに脳内で整理されていなければならないということだ。これは言い換えれば、「自分が話せないテーマは理解できていない」ということでもある。だから、書くのと話すのは別物であり、「書くのが上手くなれば話すのも上手くなる」というのも間違いで、話すための練習をしなければ永久に話す力はつかない。


 では、話す力をつけるためにはどうしたらいいのか。一番効果的なのは、実際に人前でプレゼンをする機会を増やすことだと思う。だけど、そんな機会がいつでもある訳じゃない。なんとか機会を増やそうと、学校の人に「プレゼンを鍛える会」を作ろうと呼びかけたりもした。僕にしては珍しくアクティブだと思ったんだけど、周りの賛同が得られずに、計画倒れ。プレゼン能力が足りんかったわ。じゃあ、一人でもできることは何かと考えてみると、やっぱり「一人で口に出してみる」というのが一番練習になるんじゃないだろうか。実際やってみると、全然話せない自分に壁殴級に呆れる。頭の中でいくら考えたつもりになっていても、ちゃんと順番通りに整理されていなくて、上手く話せない。とにかく、書くのと違って「後戻りできない」ってのがプレッシャーで、物凄く頭を使う。いきなりそんなんやったら頭がぶっ壊れる、って時は、話すのは置いといて、「後戻りしない」というルールを作って書く、ってのも良いと思う。この場合、戻ることはできなくても、途中で立ち止まることはできるから、書くのと話すのの中間くらいの難易度になる。

 まぁなんにせよ、僕にとって、プレゼン能力はいくら鍛えても鍛えすぎることのない、良い向上心のエサだ。