独身20代の機動力


外国っぽいとこ@西伊豆の井田集落

 独身20代で大企業に勤める目的ってなんだろう。人生で一番リスクが取れる時期で、人生で一番リスクが取れる身分のときに、安定した大企業正社員の身分でぬくぬくと暮らす目的。
 歳とって再挑戦が難しくなったり、健康上の問題が出てきたりするとリスク取れなくなるし、結婚して守るべき家族が出来てもリスク取れなくなるのは分かる。そういう人と比べて、20代独身は圧倒的な「失うものの無さ」を持っている。そしてそれは今後失われていくことが明確になっているものだ。だったら今、リスクとれなかったら一生取れないんじゃないかと思う。
 もともと僕が会社に就職した目的は2つだった。「自分の視野を広げたい」と「自分がどれくらい社会で通じるか知りたい」だ。前者については、日々いろんな業種・分野の案件に触れて視野は広がり続けているものの、同世代平均くらいには社会について詳しくなったと思っていて、一通り満足している。後者についても、一通り考えを巡らせ終えて、経験の深い社員に比べるとまだ効率の悪いところがあるものの、「丁寧に誠意を持って仕事すればちゃんと通用する」自信をつけた。だからもともと会社に対して期待していたことは一通り達成したと思っている。というか最初から「ちゃんと社会人3年くらいやりました」というのが言いたかっただけなのかもしれない。
 今僕は「やりたいこと」をわりと明確に持っている。そしてそれに向けてあれこれ考えている。一つどうしても気になってしまうのは、やはり「今の生活水準を捨てられるか」ってことだ。正直今の仕事は、給料がいい。他の世界でもっと頑張っている人たちを馬鹿にしてるんじゃないかと思うくらいもらっていると僕は思っている(もっと働いていないのにもっと給料もらっている人もいっぱい知ってるけど)。そして安定している。ここにこのままいれば、これが続くどころか、さらに給料が上がっていくことがほぼ約束されている。なんてずるいんだ。こんなヌルい生活、早く捨てないと本当に捨てられなくなってしまいそうだ。
 人生二回あるなら二回目は大企業ヌクヌクコースでいいけど、一回しかないとしたら、やっぱ暴れられるうちに暴れておきたい。やりたいと思っていることがある20代独身が、それをやらない理由がない。そもそも日本にいる時点でどんなに失敗しても死なない。給料についても、今の身分を続けるよりも高給を別の方法でゲットするのはほぼ無理なので、最初から要求事項から外しておけばよい。金銭的に裕福でなくても幸せに生きられることを知っているしその自信がある。金銭的に裕福で生活水準が高くても欲望は底なしに沸いて来るであろうことも大体想像がつく。
 少なくとも、そういうことをいま考えて、ここで文章化している時点で、このままで良いわけがないような気がしている。冒険して失敗してみてから「やっぱ金っすよね、やっぱ安定っすよね。すみませんでした」となってから、もう一度そういう目的でやり直してもまだいけるんでね?という自尊心に溢れた仮説。
 そういうことを毎日毎日考えながら、だんだん自分の中で既成事実を作り上げていく作業を日々繰りかえしているうちに、社会人3年目になっていた。来年の今頃、何してるかな?未来はわからないほうが楽しいし、選択肢は多いほうが勝ちだと信じている。